2508-000342-02 創立30周年記念誌_本文 デジタルカタログ
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29ですから、私が活動を通じて伝えたいのは、まず大人一人ひとりが自分を愛し、家族を大切にすることから始めようというメッセージです。自分を愛し、大切にすることが、最終的には社会全体に良い影響を与えるのだと信じています。髙子:素晴らしい視点ですね。社会全体を変えていくためには、まず大人が自分を大切にし、幸せであることが必要だという点、私たちも強く感じています。それでは、具体的にどのような活動を通じて大人を幸せにしようと考えているのでしょうか?サヘル:具体的な活動の一つとしては、地域のイベントや活動を通じて、自分の力を発揮できる場を提供することです。最近行った活動の中で、『おせっかい食卓』と題して施設の子どもたちに手料理を届けるイベントを企画して、タコライスを作ったり、かき氷をプレゼントしました。こうした活動を通じて、支援を受けている人々が自分の力を発揮することができ、自己肯定感を高めるきっかけになります。自分ができることで他者に貢献することは、支援する側の責任感も生まれ、社会を変える第一歩になると感じています。ただし、支援する側がどうしても自分一人で頑張ろうとしてしまうのが現状です。しかし、それが社会を変えるために十分な方法かと言えば、そうではないと感じています。社会を変えるためには、関心のなかった人々を巻き込み、共に動くことが必要です。社会問題に関心が薄い人たちにも関わってもらい、彼らが何かを成し遂げる手助けをすることが大切だと思っています。髙子:まさに、巻き込む力こそが社会を変える鍵となりますね。それでは、支援活動を進める上で大切にしている考え方はありますか?サヘル:支援活動を通じて最も大切にしているのは、『自信を持たせること』です。物資を送ったり学費を支援したりするだけでは、相手の本当の自立には繋がりません。最も重要なのは、彼らに自信を与え、彼ら自身が自分を大切にできるように導くことだと感じています。私たちが行う支援活動では、相手が『自分の居場所』を見つける力を育むことが最も価値があると考えています。自分を大切にし、自分の強みを活かすことで、初めて社会に貢献できる存在になると思います。髙子:自信を持たせること、それが支援の根本にあるという点、非常に共感します。さて、最後に、今後の社会や地域に向けてどんなメッセージを送りますか?サヘル:私が伝えたいのは、まず『自分らしくいられる場所を作る』ことが大切だということです。それは、物理的な場所ではなく、心の中にあります。自己理解を深め、他者を理解することこそが、真の共生を生む力だと信じています。また、私が感じるのは、時には『やめる勇気』も必要だということです。無理に続けても、自分が楽しんでいなければ、そのエネルギーは他者に良い影響を与えません。やめることも、成長の一歩だと思います。支援活動においても、自分が楽しんでいないと、それは続かないし、効果も薄れてしまいます。ですから、自分の心と向き合い、楽しく続けられる活動をすることが、最終的に社会貢献に繋がるのではないかと思っています。髙子:『やめる勇気』という言葉、非常に響きますね。無理せず、自分を大切にしながら活動を続けることが大切だというメッセージを、私たちも大事にしていきたいと思います。サヘル・ローズ 様(Sahel Rosa) プロフィールイラン出身。7歳までイランの孤児院で過ごし、8歳で来日。舞台『恭しき娼婦』では主演をつとめ、主演映画『冷たい床』ではミラノ国際映画祭をはじめとする様々な映画祭にて賞を受賞。映画・舞台の出演だけでなく、近年では映画監督などマルチに活躍し、表現者として活動の幅を広げている。2024年には自身が監督を務めた『花束』が公開された。芸能活動以外にも、個人で国内外問わず支援活動を続け、2020年にはアメリカで人権活動家賞も受賞。最も重要なのは、彼らに自信を与え、彼ら自身が自分を大切にできるように導くこと自分の心と向き合い、楽しく続けられる活動をすることが、最終的に社会貢献に繋がる

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